「君をこのまま殺してしまいそうだよ、せつら」







 欲望は隠さずに伝えるのが常の男だが、ここまで言われるとは思ってもみなかった。
自分の血で汚れる美貌を思い、倒錯的な快楽の波を掴む。
くすりと哂ってメフィストは躯を重ね、きつく抱きしめてくる。
触れ合った素肌がまるで嘘のように熱くて思わず喉が鳴った。

 月光に晒された均整の取れた上半身。
だからこそ、そのバランスを崩したくて思わず、噛み付きたくなる。
糸を絡ませ、傷を付けたくなる。
多分この男はそうと知っていて肌を見せることを頑なに拒んでいたのだ。
ならば。
今、自らに課したその禁を解いた男をどう扱おうと
神以外の誰が責めようか……――






 そっと肩を押してメフィストの躯を起こさせる。
少し乱れた髪が肩から胸へと流れる。
おかしくなりそうなくらいこの男は美しかった。

 知らず上がる息を隠そうと、そのままベッドの反対側へと押し倒し、躯を入れ替える。
頭がベッドに乗らず、首が辛うじてベッドの淵に掛かったメフィストが
何か言葉を漏らしたようだが、気にせず鎖骨に舌を這わせる。
首元が晒されてちょうどいい塩梅だ、と考える辺り、非難されても仕方ないかもしれないが。

 晒された素肌に、口付けを繰り返しながら、刻印を散らしていく。
微かに指が動く箇所は、殊更念入りに。
不安定な体位に、メフィストの躯は何回か率直に反応を返してきた。





「せつら」

 掠れた声で囁かれ、漸くメフィストを解放する。
これ以上無理を強いるのが可哀想だと思ったのではない。
これ以上、自分が待てなかったのだ。

 脚の間に膝立ちにさせられ腰に腕が回る。
そのまま強く引くものだから、自分から下肢を晒し強請っている様で妙に恥ずかしい。
そのままそっと臍に舌を差し込まれ、思わず声が漏れた。
不意打ち過ぎる。
そして、考えもしない感覚だった。
平衡感覚がつかめなくなり、メフィストの膝に手を置き、
何とか倒れこむのを回避する。

 メフィストは執拗に臍の周りを舐めてきた。
空いた左手で、張り詰めたものを弄ばれる。
既に、ズボンは下着ごと膝のところまで下ろされていた。
窄められた舌になぞられ、躯の奥まで刺激が伝わる。
下肢に熱が集中し……
まるで……内側から犯されている様だ。
――そう想像した途端、挿入される熱をリアルに思い出し、すとん、と躯が落ちた。






「めふぃ……もう……」

 メフィストの脚の間でくずれた正座をしたまま、許しを請う。
さっきまでは優勢だったのに、それは数分しか持たなかった。

 メフィストは腰から顔を離すと、視線を合わせてきた。
「入れて欲しい」と言おうとして、止めた。
この男は羞恥心を煽ることも無理を強いることもしなかった。
思うに、遠慮でも何でもなく生理的に嫌なのだろう。
こちらが嫌だと言えば、もしくは嫌だという表情を見せれば、
皮肉の一つも言わずに行為を中断する。
本当に、何処までも矛盾しない男なのだ。

「せつら……」

 真摯に、熱く、甘く。

 幸福に、落ちていく。




















 躯を重ねる度に、濃密になる何物かを、
 恋とか愛とか、そんな言葉では捉えきれなくて……――





















幸福飽和量超過

これ以上など、考えられない――






























日記1800キリ。リク内容は「優しいメフィ」Byたらげさん。
続いても全然優しくなかったです。ダメでした。ごめんなさい。
いずみ遊 2002年9月12日




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