Lunatic moon *いずみ遊*









 新月だ。

 言われるまで気付かなかった。
都会の光は、月の代わりとなる。
今夜、頭上に月が無いことを、一体何人の人間が気付くのか。
恐らく、<魔界都市>に限って言えば、100人もいるまい。
空に輝く月よりも、地上で苦しむ自分のことで、
誰も彼も精一杯だ。



 そう言うと、メフィストは低く哂った。
地上で苦しむ自分とは、君のことかね?、と。
酷く下卑た哂いなのに、そうと映らない所がこの医師故のこと。

 長い黒髪が、脚に纏わり付く。

「――!、め……っ!」

 生暖かいものに、熱の根源を包まれた。
思わず腰が浮く。
この医師は何を――!

 丁寧に竿を舐められ、声が漏れるのを止められない。
それを助長するかの様に―実際そうなのかもしれないが―
メフィストは殊更にそれを弄ぶ。
ともすればどこかへ飛んでいきそうな理性を、
シーツを固く掴むことで繋ぎとめる。

「あっ……ん」

 恥ずかしいから早く止めて欲しいという欲求と、
もっと奥へ、……恋人の喉を犯したいという欲望が交差する。

 先端を含まれた。
息が詰まる。

 限界を感じた時、つ、と冷たい物が根源に当てられた。

「やっ……」

「偶には我慢もしてみたらどうかね。」

 月が……、否、メフィストが見下ろしている。
押し込められた快楽が行き場を無くして、身体の中でざわめく。
それが針金だと思い当たらないうちに、メフィストの手が後ろへと回った。
















「ふ……あ……」

 方や封じられ、方や絶え間なく与えられる熱。
完全に勃起した自身から、針金によって抑えられているにも関らず
止め処もなく白濁した液体が流れ、挿入を潤滑にする。
卑猥な音も、きっとその所為だ。
目を閉じることは出来ても、耳を塞ぐことはできない。
仮にそれが出来たとしても、感覚を閉じることは不可能だ。
振動もそれに伴って込み上げる快感も、ただ享受するしかない。

「あああっ!……ん

 敏感な所を突かれ、声が上がる。
またも外へ逃げられなかった熱が逆流してくる。
もう……。



「泣く程気持ちいいかね?」



 意地の悪い問いをしながら、身体を屈めて涙を一粒ずつ舐め取る。
謝罪のつもりだろうか。
白い医師は少し唇の端を歪ませて、口付けをしてきた。

「い…から、はずして……」

 再び溢れる涙へと舌を伸ばしたメフィストを、力の入らない手で制する。
これ以上、一秒たりとも我慢は出来ない。

 異を唱えるかとも思ったが、メフィストは意外にもあっさりと
身体を引いた。
勿論、その前に自分の肩に置かれた手に口付けを落とすのも忘れない。
――結局、甘やかし上手なのだ、この男は。


















 忌々しい針金が緩められたら、後は――
思うままに蹂躙されるだけ。
理性を繋ぎとめるはずの手は何時の間にかに医師の背に回っている。

 全てを――

 忙しない息も、流れる汗も、止め処も無い喘ぎも、
全て目の前の男の為。

全てを奪い去ってくれ―――

それが愛と呼ばれるものの本質ならば。
















 楔が深く打たれ、
 熱は意識と共に漸く解放された。


































今宵は新月
それは狂気にも似た甘い誘惑――












 日記666キリ。
なんと、続きます。前後編で一気にキリリク二つをクリアしようとしてます(笑)
前編はLunatic moon。リクエストは鬼畜なドクターByたらげさん。
白黒で鬼畜と言ったら、やはり針金でしょう!、と勝手に決めて書きました。
少しでも、「エロい」と感じていただければこれ幸いです。
いずみ遊 2002年6月29日





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