Photo Lovers *いずみ遊*







 家に帰ると、そこは人だかりであった。

 ――頭に浮かんだままを言葉にすると、
有名な文学作品の冒頭になった。
それを喜ばしいと思うかどうかは人によると思うが、
普段は喜ばしく思うであろう秋せつらも、この時ばかりは、
そんなことは二の次三の次の出来事であったらしい。

「な、何売ってんだよ、藪医者!!!!」

 珍しく大声を出したせつらに対しての返答は、
更に大きな黄色い悲鳴と、

「おや、お帰りかね?」

 という何時もの人を食った様なメフィストの言葉であった。







 数分後、店の周りの人間をみんな追い払い、
そして、バイトも追い出したせつらは、卓袱台の前に腰掛けた。
無論、前にはメフィストが座っている。

「これは何だ、メフィスト」

 せつらが一枚の写真を卓袱台の上に置いた。
バイトがこそこそと持ち帰ろうとしていた写真だ。
そこに写るのは――どこからどう見ても、秋せつら、であった。

「君の写真だな」

「そうだ、僕の写真だ。どうしてこんなものがここにある?」

「どうして、と言われても、今君が自分で置いたのではないかね」

「そうじゃない。
これは、おまえが撮った写真だろ?」

「何故そう思うのかね」

「何故って、見れば分かるだろ?!」

 メフィストの視線が写真へと落ちる。
満ち足りた笑顔で眠るせつら。

「……分からぬ」

「ああそうかい」

「言っておくが、それは私が撮った写真ではないぞ」

「な……まだ否定するの?!往生際が悪い!!
こんな写真を撮る悪趣味な奴はおまえしかいなじゃないか!!」

 ばん、と卓袱台を叩く。
それでもメフィストは納得が行かないという顔をする。

「なんだよ、その顔は。
じゃぁ、聞くけど、なんでこの写真を売りさばいてたんだよ。
あの人だかりはなんだ?
おまえがこの写真を持ってきて売ってたんだろ?!」

「せつら……」

「それとも何?バイトをけしかけたのか?
っていうか人の家の前で商売しないでくれる?」

「せつら、根本的に間違っている」

「何が?!著作権の侵害だ、訴えてやる!!」

「だから、私はダミーなのだ」






 ……。






 思わず糸を動かそうとしていたせつらの右手が止まった。

「だ、だみー……?」

「何時もなら気付くから、言わなかったのだが」

「……だ……藪……」

 せつらは怒りの矛先を失ってへなりと卓袱台にへたれこんだ。

「にしたって、この写真はどこから出てきたんだよ……」

「私が持ってきた。私とはダミーである私のことだ」

「ああ、分かってるよ……」

「それをあのバイトに見られて、何時の間にかあんなことに……」

「……堕天使め……」

 せつらは恨めしげにバイトの女の子の名前を呟いた。
明日には求人広告が出るかもしれない。






「……ちょっと待てよ」

 怒りの矛先をバイトに向けようとして、せつらは、はたと考える。
私が持ってきた。
持ってきた、ということは、この写真は元は……。

「成る程」

 悪魔も凍るような笑みで、せつらは呟いた。















 翌日、メフィスト病院院長室直通電話には
「これから一ヶ月、セックス禁止」
という過激な留守電が入り、
何時の間にか消えたせつらの写真に首を傾げていた白い医師が
更に首を傾げることになったとか。

 また、秋せんべい店のバイトがまた代わったと言うのも、
話の結末に付け加えておこう。














日記1000キリ。お粗末サマです(涙)
リクは、「秋せつらが出てくる小説(ドクターが翻弄される話)」By堕天使さん。
すんません、リク当事者なのに、酷い目にあわせて……。
これは、決して本編のドクターではないので!

いずみ遊 2002年7月13日



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