Sweet Sweet *いずみ遊 柔らかな感触に包まれて、夢の続きのように目が覚めた。 「お目覚めかね?」 朝からこの声は犯罪だろうと、思わず苦笑する。 昨夜の、というより、つい数時間前まで行われていた行為を彷彿とさせる。 線の細い手が顔に近付く。 目を閉じる。 彼は前髪を攫っていく。 さらさらと。 あまりに気持ちがよすぎて、ともすればそのまままた夢の世界へ 旅立ってしまいそうだ。 けれど、それを避ける為に起き上がるのも、どうかと思う。 恋人と共に愛を育む行為に勤しむことも嫌いではないが、 こうやって穏やかに時を過ごすのも必要なのだ。 何もなく、ただ互いに熱と言葉を交し合う。 そんな甘い時間。 時を問うと、彼は時計も見ずに、9時、と告げた。 まだ5時間しか寝ていない。 「嵐は去ったようだ」 耳元を、誰もが一度は自分の名前を呼んで欲しいと思うような声が 掠める。 夜のような情熱的な響きはなくとも、十分に艶っぽいから。 ――惚れた欲目だろうか。 あまり、大勢に聞かせたくは無い声だ。 「朝から職員が庭の掃除をしていた。 相当、色んなものが飛んできたらしい」 そういえば、昨晩は少し風の音が強かったかもしれない。 あまり、記憶は無いけれど。 「それは光栄だな」 別に褒めた訳じゃない。 頬が赤らむのを感じて、もぞもぞとその白いケープに顔を埋める。 彼が低く笑う振動を感じる。 「君の店は大丈夫かね」 そういえば、大変なことになっているかもしれない。 公園が近いし、ひょっとしたら木がぶつかって 瓦の一枚や二枚飛んでいるかも。 「見に行ってみるかね?」 このベッドから外へ出るだって? そんなことが出来るヤツがいたら、今すぐ目の前に連れて来て欲しい。 答えないでいると、また笑われた。 「別に君一人で行けとはいっていない。 一緒に行かないかねと誘っているのだ」 誘うも何も、行く場所は僕の家だ。 それはおかしい。 「そうかね?一緒に過ごせれば、理由はどうでも良いのだがね、私は」 ――だから、そう無意味に口説くのは止めてくれないか。 そうでなくたって、こんなに好きなのに。 何の未練もなく、彼は白いケープを優雅に翻しながらベッドから降りた。 無くなった熱に身震いがする。 けれど 「行かぬのかね?」 差し出された手。 再び熱を得るべく、その手を取る。 ――ま、おまえがいるなら、ベッドでも街中でも、何処でもいいんだけどね。 その言葉だけ胸に秘めて、 まだ一日は始まったばかりだから。 日記600キリ。「メフィ先生のエスコートで、楽しいデートをするせつら」By広瀬さん。 え、どこがデートだって?……これから二人はデートするんですよ(オイ) いや、この二人がデートする様子が全く頭に浮かびませんでした。 いずみ遊 2002年6月27日 *ブラウザを閉じてお戻り下さい* |