菜の花畑 *広瀬刹羅さん*











 辺り一面が黄色の絨毯で、覆われていた。
 その中に佇むのは、白い美貌…。
 その様を目の当たりにした者は、一面の黄色など視界に入らないだろう。
 ただ白色一点のみ。
 それほどまでに、彼の者は美しかった。
 一面の菜の花が、ただの絨毯に成り下がってしまう程に…。
 美しい繊手が、時折閃く。
 緑色の茎に指先を添え、優雅に手折っていく。
 そうして集めた菜の花の花束。
 抱えられた花達は、この腕の中で枯れまいと必死に咲いていた。
 そよ風が通り過ぎたかのように、白い美貌の医師は菜の花畑を後にした。
 その菜の花の花束を手に、訪れたのは西新宿。
 ここまでの道のり、抱えられた花達の悲鳴を聞いた者がどれだけ居た事か。
 至福であり、苦痛であり…。
 そして彼等は知らなかった。
 これから訪れる、最大の甘美な苦痛を…。

 西新宿にある秋せんべい店の裏玄関前。
 そこで足を止めた彼は、チャイムを鳴らそうと指先をあげた。
 だが、その前に扉が開いた。
「あ…メフィスト」
「出かける所だったかね?」
「あー、飯の材料でも買いに…」
「夕食なら奢ろう」
「本当?やった!」
 嬉しそうに目の前の者が言うと、メフィストの美貌が綻ぶ。
 ふと、思い出したように、目の前の者…秋せつらが問いかけた。
「そういや、お前、何しに来たんだ?」
「これを君に…」
 差し出したのは黄色い花束。
 メフィスト自ら摘んだ、菜の花の花束だった。
 花達の悲鳴が一斉にあがった。
 美しい者の腕に抱かれていただけでも、枯れまいと必死だったのに、と。
 目の前の美しい人物に差し出された自分たちは、一体どうすれば良い。
 そう悲鳴をあげる花達は、いともあっさりメフィストからせつらの手へと、
渡っていった。
「どうしたの、これ?」
「仏壇の花が萎れかけていただろう?」
「あー…そういや、買ってこようと思ってて、忘れてた」
 サンキューとだけ呟き、せつらは中へと入っていく。
「あがれよ。礼にお茶ぐらい飲ませてやる」
 言われるままに、中へとあがる。
 居間のテーブルの前に座ると、ポットと急須と湯飲みが置かれた。
「悪いけど自分で入れて。花、飾ってくるから」
 言い残し、パタパタと部屋を出ていった。
「まったく、君という男は…」
 そう呟きながら、急須に手を伸ばす。
 まぁ、せつらがあがっていけなどと、滅多な事では言わないのだから、今回
はかなり幸運だったのかもしれない。
 そう苦笑しつつも、どこか幸せそうなメフィストだった…。








 <魔人の住処〜西新宿観光案内所〜>の広瀬刹羅さんより。餅は餅屋、とはよく言った物で、
甘いものはやはり甘いものの達人に書いていただくのが一番でございます。うっとり。
いいですね、何もしなくても白黒が増えていくこの状況が(笑)
今回、色々な人から小説を頂いて、人それぞれ、文章の書き方から違うものだなぁ、と
改めて思いました。広瀬さん、素敵な小説ありがとうございました。
これだけじゃ、満足できない、という方はリンクから広瀬さんのHPへリンクからどうぞ!
2003年4月21日


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